難航する事業創出プロジェクト。成果につなげるためのポイントとは

業種
大手部品製造業D社

規模
売上5,000億円

背景

自動車部品を主軸とし、世界各国に複数拠点を持つ総合部品製造業のD社。激変する業界全体の状況と自社の経営環境を鑑み、社内組織の見直しが進められました。その結果、部門間の枠を超え新たな市場開拓のための製品・サービス検討、そこで発案された製品・サービスの事業化をミッションとした事業創出プロジェクトを立ち上げることになったのです。

各部門から人員が集められプロジェクトチームが発足し、早速開かれたキックオフミーティングでは現状の課題や将来目指す姿についての活発な意見が次々と飛び出します。このような状況から、このプロジェクトが担うミッションは着実に遂行されていくと思われました。ところが、いざ「具体的に何をどのように事業化するべきか」と実行施策を検討する段階に入った途端、意見がまとまらなくなってしまったのです。
チームのメンバーは、各部門でそれなりの経験を積んだ中堅社員を中心にした、いわば精鋭ぞろいですが、目指す姿は理解していても製品の事業化における具体的な方策を検討した実績や知見はありません。上層部の肝いりのプロジェクトに早くも暗雲が立ち込めはじめました。

課題

手探りではじめた新規市場開拓プロジェクト。思わぬ落とし穴。

本プロジェクトで行うべき実行施策が決まらない状況を脱したきっかけは、あるメンバーの一言でした。
「既に開発部門で試作した製品群があるが、それらを事業化するための施策を考えてみてはどうか」というものでした。そこで、まずは試作品の市場開拓策について検討してみようということになり、ようやくプロジェクトは動きはじめたのです。

そのときの様子を、プロジェクトメンバーで生産技術部から出席したT氏は次のように語ります。 「はじめに製品開発部長の意向を伺いつつ、開発に至った経緯や想定したターゲットなどのヒアリングから着手しました。製品開発部の話では、『製品の特長を生かせる自動車市場に展開することを想定していた』ということで、メンバーもその方向で議論を進めることにしました。自動車関係は自社としても知見が豊富な業界であり、最良の選択と思えたからです」

次に検討したのが競合他社との差別化です。先行する競合製品と、どう差別化していけばよいのか、この製品の価値や自社の強みは何かなどが話し合われました。しかしどの案も決定打に欠け、明確な強いメッセージとして打ち出せないものばかりでした。
しかしここで止まるわけにはいきません。T氏たちは市場ニーズの調査や宣伝活動の方法など、具体的な実行計画を練ってみることにしたのですが、強みや具体的な攻め方が固まっていない以上、どこから手をつけていけばよいのか意見が分かれて会議は毎回紛糾。明確な答えが出ないまま、時間ばかりが過ぎていきました。

なかなか具体案が挙がってこない状況にプロジェクトの担当役員から、打開策として展示会に出展してみてはどうかと提案がありました。T氏たちは不安を抱えながらも出展の準備を進めましたが、結果は惨敗。そもそもT氏たちが想定していた製品の活用方法に対して、自動車市場の反応がいま一つだったのです。製品分野ということもあって、新製品の参入に対しては何かしらの良い反応を得られ、いくつかの商談に繋げられるかと思っていたプロジェクトメンバーは意気消沈。

「ターゲットの絞り込みが甘かった」「ユーザーの活用シーンを具体的にイメージできていなかった」など、プラン設計の甘さと重要さを痛感するばかりでした。ノウハウやナレッジのないまま、これ以上の議論を重ねても有効な手立てが見つかるはずもなく、このプロジェクトは手詰まりとなってしまいました。

課題のポイント

  • 事業化するための具体的な実行計画を立てることができなかった
  • とりあえずの策で展示会に出展したものの、期待した成果は得られなかった
  • ノウハウやナレッジがなく、停滞した状況を打破する方法が分からなかった
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