マーケティング未経験の老舗メーカーが、マーケ部署の立ち上げに成功できた理由

業種
金属部品メーカーA社

規模
売上300億円

背景

自動車関連のメーカー向けに様々な金属部品を納入しているA社。EV化が進む昨今、A社製部品の取り扱いが徐々に減少していました。今では全盛期の2/3程度まで売上が落ち込んでいることに相当な危機感を持っており、経営会議では毎回この件が取りざたされましたが、上層部は具体的な対策を決めることができなかったのです。

ある日、役員の一人が「うちの会社でもマーケティングを行ってみないか」と提案してきました。A社と同じように、業界が揺れ動く中で自社の強みを生かしてV字回復を遂げた企業の話を聞いたことが要因でした。しかしA社は創業以来マーケティング的な活動を行ったことがなく、年2回の展示会出展とお付き合いで業界紙に広告を入れたことが数回あった程度。手始めに、大学でマーケティングを学んだことがある若手社員を中心に勉強会を開催しましたが、部署や社員の間には理解度に大きな差が生じてしまいました。このままでは2回目の開催などとても難しい状態になってしまったのです。

課題

「自社にマーケティング部が!」ところが課題は山積みで…

勉強会の散々な状況とはうらはらに、社内には「マーケティング部の設立」という機運が徐々に芽生え始めていました。勉強会の立て直しは元より、本当にマーケティング部を作るためにはどうしたらよいのか、このプロジェクトを任された販売促進部長のM氏は毎日気が気ではありませんでした。上層部からは「既存顧客でなく、新規顧客を狙ってみたら」「いや、新市場に打って出よう」等の言葉が連日飛び交い、M氏の耳に入ってきます。

情報収集を進める中、M氏がたどり着いたのは、B2Bマーケティングのサービスを提供している企業のセミナーに参加したり、ホワイトペーパーを片っ端から読んだりすることでした。このときの状況を、M氏は次のように振り返ります。
「とにかく情報が欲しかったです。当社にはB2Bマーケティングの仕組みやその組織構築の経験者などはいませんから。『外部から採用しては』という声もありましたが、今さらうちみたいな会社には無理ですよ。だったら、自分が何とかしようと腹をくくりました」

しかし実際にセミナーを聴講すると、自社サービスの紹介や製造業以外の事例ばかりで、全く参考になりません。わからない専門用語が多いうえに、売り込みの電話も毎日かかってくるようになり、落ち着いて仕事ができる状態ではありませんでした。

そんな状況の中、さらなる問題がM氏にのしかかります。この活動に激しく異を唱える部署が出てきたのです。それは今まで既存顧客にメインの商材で売上を作ってきた営業部門でした。営業部はその後も、マーケティング活動の準備に非協力的な態度を貫きます。具体的には営業名刺の提出拒否や、これらリードに対してメールや電話などのコンタクト禁止を強く指示してきたのです。

情報が役に立たないうえに、このような営業部の態度。せっかくのプロジェクトが良いかたちで始動しそうな時だっただけに、M氏は頭を抱えてしまいました。

課題のポイント

  • マーケティングの仕組み組織の構築経験がなく、何から始めてよいかわからない
  • 相談先を見つけようとB2Bマーケティング企業のセミナー聴講やホワイトペーパーダウンロードをしたが、最適な情報を見つけだせなかった
  • マーケティング部設立に営業部が猛反発し、設立準備に非協力的
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