「引き合い」頼みのメーカーが、社運をかけた新規市場に展開できたワケ

業種
設備機器メーカーC社

規模
売上280億円

背景

さまざまな工場に配電盤や電機設備を納入している、老舗メーカーのC社。今まで安定して推移していた主力製品の売上が、3年くらい前から少しずつ減少し始めたことに上層部は苛立ちを隠せませんでした。内訳を調べたところ大口の既存顧客や代理店からの注文が減ってきたことが判明。早急な対策が求められました。

C社の売上の8割以上はこの大口の既存顧客から注文書が届く、いわゆる「引き合い」が中心でした。また、主力商材の多くはライフサイクルが7~10年と長いため、営業がすべての案件をExcelや自分の手帳で管理している状況だったのです。そのため、営業担当者のうっかりで案件が飛んでしまうこともあり、ちゃんと把握できているかの判断も難しい状況でした。事実、案件管理が漏れて競合に取られてしまったことも、過去何度もあったのです。

こういった現状も加味したうえで、上層部が策定した中期経営計画では主力製品を軸に新規顧客や新規市場を開拓することになりました。そのうえで、具体的なアクションは、営業本部にゆだねられたのですが、検討段階ではさまざまな問題が発生しました。

課題

見よう見まねで、マーケティングのフレームワークに手を出してみたが…

本来であれば、こういった業務はマーケティングを担当する部署が行うのが適任です。しかし、そういった部署がないC社では、例えば営業本部が展示会の企画・運営から集めた名刺情報の管理までを行い、Webに掲載するコンテンツまで書いている状況でした。

ひとまず今回のアクションを検討するために、営業本部のリーダーたちはミーティングを重ね、アイデアを持ち寄りました。その結果、マーケティングのフレームワークを使ってターゲット設定を行ってみることになります。
このときの状況を、リーダーの一人T氏は次のように振り返ります。
「今まで、このようなフレームワークなんて使ったことがありませんでした。ターゲットなどについてディスカッションを行っても『本当にこんな市場がある?』『今までこういう営業提案、経験したことあったっけ?』など、会議は毎回空転続きでした」
この状況に上層部からは「どうなっているか」という催促の声が、連日営業本部内に響いていたのです。

問題はこれだけではありません。営業の案件管理についても、メスが入りました。リーダーたちが一番驚いたのが、案件についての定義でした。営業グループ、または担当者によって定義がバラバラだったのです。ここでも先ほどのフレームワークの議論同様、どういった状態のものをA、B案件とするかの主張がぶつかり合います。
「実はあるセミナーで、『売上げの方程式』という話を聞きました。それは名前の通り、売上げをその構造通りに分解してみると、『案件数×決定率×案件単価』に分けられるというものでした。案件単価は大体平均が出せますし、同様に決定率も出せそうです。なので問題はこの案件数なのですが、みんなの案件に対する考え方がバラバラでは、売り上げ目標なんかとても立てられません」(T氏)

新規市場や顧客のターゲットをどうするか、そこで上げるべき売上額や必要な案件数はどれくらいなのか。一向に進展がないまま、上層部からの催促と空転する会議に疲弊したリーダーたちからは、この中期経営計画にあきらめの声が出はじめました。

課題のポイント

  • 案件管理を営業個人にゆだねていて、抜け漏れによる失注などが後を絶たなかった
  • 見よう見まねで行ったマーケティングのフレームワークは使いこなせず、結論が出ない
  • 言葉の定義が揃っておらず、計画が立てられない
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